バイトをする #3

オレは言っていることとやっていることが一致している人が大好きだ。
 
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バイト後隣のホテルでバイトしてた津田さんと落ち合ってメシを喰う。
津田さんはロードムービーを撮るなら僕は帰り道しか撮らないと言った。
すげえカッコいい。それはとてもリアルな挑戦だと思う。
 
被写体との距離を写真家は常に問題にする。
超えられないフェンスの向こうを撮るために、彼らはズームレンズを使用するだろう。
津田さんの場合は向こうにまず声をかけ、空から一気に会いに行く。単焦点のレンズで。
それが津田さんの近年のシリーズ「近づく」の手法だ。
三脚も構えない、ファインダーも覗かない。カメラも2台しかない。
ほんとうにこの人は写真家なのかと思う。
 
でもそんなものはとにかくどうでもよくて、彼がそうやって撮り、
持ち帰ったものを僕らは見せてもらえればいいわけだ。
そうして僕らは「近づく」こと無く、その場から帰って来ることができる。
芸術は日常の途中にある。
いまそこにあったはずのリアル。