ヒビ #30

父と自転車で散歩。
魚屋を巡り、大桟橋でビールを飲んで、中華街で水餃子を食べた。
 
しだいに父はぼけていく。
まだまだ大丈夫だが、だんだんとものを覚えられなくなり、
やがて急速に忘れていくんだろう。
それまでにできるだけ、一緒に過ごしておきたいと思う。
同時に、オレは早くひとりだちしなきゃならない。
 
普通の人が当然にできることがオレにはできない。
怠惰で、愚かで、不細工で感傷的なオレができることは、
せいぜい忘れないようにすることだ。
日々を記録。
拡大した記憶を世界に。